全12回(月1回、2021年5月〜2022年4月)
参加費1回 2000円(資料代込)
コロナが世界を覆い尽くしてから1年が過ぎましたが、私たちの生活にも心にも不安と負担が大きくのしかかっています。
今、一人ひとりが自分の本来の課題に精一杯向き合うことが求められていると思います。
私自身の課題は、自分の幼年期からのテーマであり問いである、「キリスト」なるものに真剣に向き合うことだと感じています。
そこで「黙示録」と「言葉」を通して、一つの道を見出しつつ歩むような作業を、講座として公開、共有したいと考えました。
その道の過程でー
- どうすれば現代においてキリストに至れるのか、
- 日本におけるキリスト的なものとは何か、
- 一人ひとりの個に根ざした、新しい宗教性とは何か、
それを正面から問いかけ、共に探ってみたいと思います。
そこに参加することで、何らかの信仰や思想を強要されることはありませんし、無理に発言や感想を求められることもありません。
ただ、「宗教的」として敬遠されてきたテーマに正面から向き合い、かつてゲーテが『詩と真実』の中で示したような、一人ひとりが「自分の宗教」をつくりあげる可能性を探りたいと思います。
ここに自分の道が交差するかもしれないと感じた方に、ご参加いただければ幸いです。
(入間カイ)
講座内容
タイトル | 日時 |
---|---|
1. 始まり〜大本教の弾圧と隠れキリシタン〜 | 5月23日(日)午前10時〜11時半【終了】 |
2. 日本的霊性と中空構造 | 6月23日(水)20:30 – 22:00【終了】 |
3. コスモスとアンチコスモス(井筒俊彦) | 7月21日(水)20:30 – 22:00【終了】 |
4. 生命と過剰(丸山圭三郎) | 8月18日(水)20:30 – 22:00【終了】 |
5. 私の中のキリスト | 9月22日(水)20:30 – 22:00【終了】 |
6. イエスからキリストへ〜現代の薔薇十字会〜 | 10月20日(水)20:30 – 22:00【終了】 |
7. ヨブへの答えとファウスト | 11月24日(水)20:30 – 22:00【終了】 |
8. ヤーウェとグレート・マザー | 12月22日(水)20:30 – 22:00【終了】 |
9. 解放の神学とフェミニズム | 2022年1月19日(水)20:30 – 22:00 |
10. ハウスホーファーとヴァイツゼッカー | 2月23日(水)20:30 – 22:00 |
11. 永山則夫とマルクス | 3月16日(水)20:30 – 22:00 |
12. 新しいエルサレム | 4月20日(水)20:30 – 22:00 |
- 講座の時間は初回(5月23日)を除き、すべて夜、20:30 – 22:00の予定です。
- 開催方法はZoomによるオンライン講座となります。
- 12回は相互に関連していますが、関心のある回だけにご参加いただくこともできます。
- 個別の回へのお申し込み(2,000円)と、12回通しでのお申し込み(24,000円)が可能です。
- 申し込みフォームよりお申し込みください。個別のお申し込みの場合は、一つの回が終了するたびに次の回の申込みフォームを更新しますので、お手数ですが、その都度お申し込みください。
- お振り込みいただいた参加費の返金はできません。ご了承ください。
録画・録音について
この講座は個別の回を受講していただくことができますが、本来はすべての回が全体の文脈のなかで理解されるように構成されており、誤解されやすい内容も含んでいるため、個別の回の録音データと講義スライドは全12回を通して受講される方に限り、当日のご都合がつかない等でご希望があった場合に、提供させていただきます。その場合は、その都度、事務局にご連絡ください。
講座お申し込み
こちらの講座は終了しております。
内容詳細
- 始まり〜大本教の弾圧と隠れキリシタン〜
5月23日(日)午前10時〜11時半
日本の魂にとってキリストとは何かを考えるとき、日本の権力がなぜクリスチャンと大本教を弾圧したのかを見ておく必要があります。遠藤周作が描いた「沈黙する神」と、出口なおのお筆先を通して雄弁に語る「艮の金神」を較べることで、近代日本の国家と自我を見つめ、そこから「言葉を通してキリストに至る道」を探りたいと思います。 - 日本的霊性と中空構造
6月23日(水)20:30 – 22:00
鈴木大拙氏の「日本的霊性」は、太平洋戦争の圧倒的な影響の中で、日本の霊性は大地との関わりのもと鎌倉時代に覚醒したことを告げるものでしたが、戦後の河合隼雄氏のまなざしは古事記の中に日本人の自我の「中空構造」を見出しました。この二つの捉え方から、シュタイナーが見つめたキリスト衝動に迫りたいと思います。 - コスモスとアンチコスモス(井筒俊彦氏の思想をめぐって)
7月21日(水)20:30 – 22:00
日本の碩学井筒俊彦氏がイスラーム哲学から現代思想までを渉猟して切り開いた「新しい哲学」の地平は、シュタイナーのアントロポゾフィー(人智学)と大きく重なると思うのですが、ここでは井筒氏が注目した「コトバ」の作用をロゴスとしてのキリストとして捉えます。そこから日本語によるマントラや瞑想の意味について考えます。 - 生命と過剰(丸山圭三郎氏の思想をめぐって)
8月18日(水)20:30 – 22:00
井筒俊彦氏に私淑し、ソシュールを通過して独自の言語哲学をつくりあげた丸山圭三郎氏は、晩年シュタイナー思想にも出会っています。彼が論じたのはシュタイナーの講演集「ヨハネの黙示録」でしたが、その論考から出発して、現在の世界状況、人類を含む生物の進化、言葉と生命の関係を見つめ、コロナ禍が突きつけた課題に、一人ひとりの内面から対置されるものについて考えます。 - 私の中のキリスト
9月22日(水)20:30 – 22:00
シュタイナーの捉えた「キリスト衝動」は文化や教養の程度とは関わりなく、すべての人間の中に生きて働くものでした。ここでは純粋にシュタイナーのキリスト論を『第五福音書』を中心に取り上げ、山根キク氏の『キリストは日本で死んでいる』にも少し触れながら、民族とキリスト、個人とキリストの関係、現代にふさわしいキリストの捉え方について考えます。 - イエスからキリストへ〜現代の薔薇十字会〜
10月20日(水)20:30 – 22:00
シュタイナーが創始した「霊学(精神科学)自由大学」をクリスチャン・ローゼンクロイツの流れを汲む精神運動として捉えたとき、シュタイナーが連続講演『イエスからキリストへ』で述べた薔薇十字会の二つの条件、「他者の意志に干渉しないこと」「問いをもつこと」が重要な意味をもってきます。この二つは『自由の哲学』の根本原理でもありますが、それがキリスト衝動の重要な構成要素であることを現代の文脈の中で考えたいと思います。 - ヨブへの答えとファウスト
11月24日(水)20:30 – 22:00
『ヨブへの答え』は心理学者ユングの有名な著書のタイトルですが、そのモチーフは神への問いかけであり、そのクライマックスはイエス自身が十字架の上で神に投げかけた「わが神、どうしてわたしを見捨てたのですか?」という言葉です。ゲーテの『ファウスト』も、ヨブ記と同じく天上における悪魔と神との対話から始まります。神による試みと人間の側からの問いの意味をキリストとの関係で考えます。 - ヤーウェとグレート・マザー
12月22日(水)20:30 – 22:00
シュタイナーは、現代のキリスト教宗派の大半はキリストの名のもとにヤーウェを崇拝していると語りましたが、神の名の下に戦争を仕掛ける国家のありようはまさに旧約時代の恐怖による統治を思わせます。また河合隼雄氏が昔話との関連で紹介した「全てを飲み込んで支配するグレート・マザー」という象徴は、ヤーウェの父性原理と対をなしているように見えます。父と息子、母と娘の関係という現代的な文脈の中で考えることで、この二つの原理の間に立つ「子ども」としてのキリストのありようを、日本人の心性にも身近な問題として捉え直したいと思います。 - 解放の神学とフェミニズム
2022年1月19日(水)20:30 – 22:00
世界を覆う差別と暴力に対して、宗教の側から重要な動きを示したのが解放の神学だったと思います。今、私たちが目の当たりにしている政治的問題のほとんどが、帝国主義による植民地支配に由来していますが、そこには人種や民族への差別とともに、女性や同性愛者への差別や抑圧が潜んでいました。ここでは朴裕河氏の『帝国の慰安婦』から出発して、解放の神学やフェミニズムにおけるキリスト衝動について、日本の入管法や人権意識と関連させて考えていきます。 - ハウスホーファーとヴァイツゼッカー
2月23日(水)20:30 – 22:00
アルブレヒト・ハウスホーファーはヒトラーの側近といわれた地政学者カール・ハウスホーファーの息子であり、副総統ルドルフ・ヘスとも親交がありながら、ヒトラー暗殺計画に関わって銃殺されました。彼の残したモアビータ・ソネットという80篇の詩には日本への親しみが表現されていますが、彼の学生であり友人であった物理学者C.F.フォン・ヴァイツゼッカーは、1970年代に世界のキリスト教会に宛てて「戦争という制度」の撤廃を各政府に働きかけるように呼びかけました。副総統ヘスがバイオダイナミック農法やシュタイナー学校を擁護したことで、現在もアントロポゾフィーとナチズムの関係が指摘されますが、そこを生きた二人の思想から、日本との関連、そして現在の日本の課題を拾い上げてみたいと思います。 - 永山則夫とマルクス
3月16日(水)20:30 – 22:00
19歳で4人を射殺して投獄され、獄中で本を読み漁って作家になった永山則夫氏は、1997年の酒鬼薔薇事件の影響で「みせしめ」のために死刑が執行されたといわれます。私は永山氏は本来のアントロポゾーフだったと考えていますが、彼の思想形成において重要な役割を果たしたのがヘーゲル、そしてマルクスでした。現在の世界状況の中でマルクスが再び注目されていますが、永山氏にとってのヘーゲルとマルクスについて考える中で、ペルーの子どもたちへの支援を続けた彼の子ども時代への思い、そしてそこから日本におけるキリスト衝動について考えを深めていきたいと思います。 - 新しいエルサレム
4月20日(水)20:30 – 22:00
ヨハネの黙示録は最後に「新しいエルサレム」が天から下ってくるというヴィジョンを示します。イエスが見ていた「神の国」も、シュタイナーが目指した三分節化された社会も、そして「人知が働く社会」としてのアントロポゾフィー協会も、同じヴィジョンを共有しているように見えます。12回の締め括りにキリスト衝動における治療、教育、社会形成という三つの原理を見つめ、大本教もキリシタンも世直し=国体の変革ゆえに弾圧・迫害されたことに思いを向け、日本社会の変容の可能性を真剣に考えたいと思います。