(月2回、全12回)2020年7月3日(金)〜12月18日(金)
アントロポゾフィー(人智学)と精神科学(霊学)自由大学に関心のある方のための勉強会
担当:入間カイ
アントロポゾフィー(人智学)の基本をなすのは、シュタイナーが精神科学(霊学)と呼んだ、一人ひとりの主体的な「研究」です。ここでいう「研究」とは、個々人の仕事や生活体験に対して考え、感じ、認識を求めて努力することです。人生そのものがアントロポゾフィーの研究活動であり、一人ひとりがこの研究にどう向き合うかによって、人間の知(アントロポゾフィー)が動き始め、社会が変わっていくと考えるのです。シュタイナーの自由大学は、そのような人間と社会を変容させる「知」の捉え方を徹底して突き詰めたものです。コリスコ・グループでは、シュタイナーの考えた自由大学について、またアントロポゾフィー協会や自由大学の会員になることについて、主体的検討への判断材料を提供するために、12回の集中講座を開催します。
講座のタイトルですが、「秘儀参入」と聞いて、「あやしげ」とか「意味不明」と感じる方は少なくないと思います。でも、今回はあえてこの言葉を使いました。というのも、今日、私たちが知っているシュタイナー教育も、医学も、農業も、すべてはシュタイナーという人の思想から発しています。そして、シュタイナーは自分の思想のことを精神科学(霊学)、アントロポゾフィー(人智学)、または「秘儀参入の学」(Initiationswissenschaft)と呼びました。ですから、どの分野であれ、シュタイナー思想と関わっているかぎりは、「秘儀参入」と無縁ではないことになります。しかし、現在、この秘儀参入という言葉をめぐっては、多様な解釈があります。シュタイナーは晩年、自由大学の講義のなかで、「ゲーテアヌムの課題は秘儀の復活であり、重要なのは、この秘儀の復活は私たち自身を通して行われることだ」という旨のことを述べています。現代における秘儀は、シュタイナーや特定の指導的な人々によってではなく、私たち一人ひとりが人生を通して復活させていくものなのです。
このことは、ヨーゼフ・ボイスの「秘儀は中央駅で起こる」という有名な言葉とも合致します。今、シュタイナー思想に出会った一人ひとりの個人が主体となり、アントロポゾフィー運動を前に進めるためには、本来の秘儀参入に向き合う必要があると考えました。そして、それはシュタイナーの言葉に取り組むことだけではなく、それぞれが身をおく時代状況と生活現場のなかでなされなければ、シュタイナーが目指した「私たち自身による秘儀の復活」にはつながらないだろうと思います。そこで、今回は思い切って、私という個人が見ている時代と社会のいくつかのテーマを取り上げ、一つのモデルケースとしての秘儀参入の道を辿りたいと思いました。一回一回が手探りの道になりますが、その道を一緒に辿っていただくことで、現代における秘儀参入のあり方を一人ひとりが自分に即して考える手掛かりにしていただけるのではないか、と思っています。もちろん、この講座に参加することで、私という個人の考え方を押しつけたり、またはコリスコ・グループという集団に「勧誘」したりする意図はありません。むしろ、一人ひとりが自分で秘儀参入を考え、自分の道を歩むきっかけの一つにしていただければと願っています。以下は、この講座の前提となる理解です。
- 秘儀参入によって、他の人よりも高まったり、偉くなることはない。
- 秘儀参入は、主体性と自律を強める道であり、あくまでも個人の道である。
- この講座は、「目に見えない」(スピリチュアルな)ものを考慮に入れることが、現実逃避や他者への依存や支配に陥ることになるのではなく、むしろ現実社会でのより主体的な判断と責任ある行動を支えることを示そうとするものである。
日程と内容
- 7月3日(金)「人種差別と私」【終了】
- 7月17日(金)「感染症の霊学」【終了】
- 8月7日(金)「水俣学とアントロポゾフィー」【終了】
- 8月21日(金)「ジェンダーと瞑想」【終了】
- 9月4日(金)「越境者と故郷喪失者」【終了】
- 9月25日(金)「エイズのメッセージ」【終了】
- 10月9日(金)「脱学校化社会とシュタイナー教育」【終了】
- 10月23日(金)「脱病院化社会とアントロポゾフィー医学」【終了】
- 11月6日(金)「ベーシックインカムと社会三層化」【終了】
- 11月20日(金)「占星術の現代的意味」【終了】
- 12月4日(金)「タロットの現代的意味」【終了】
- 12月18日(金)「現代の秘儀参入」【終了】
- 講座の時間はすべて夜、19:00 – 20:00の予定です。
- 参加費は1回 2000円(資料代込み)です。
- 開催方法は基本的にオンライン(Zoom)を予定しています。
- 12回は相互に関連していますが、関心のある回だけにご参加いただくこともできます。
- 個別の回へのお申し込みと、12回通しでのお申し込みが可能です。
- 申し込みフォームよりお申し込みください。個別のお申し込みの場合は、一つの回が終了するたびに次の回の申込みフォームを更新しますので、お手数ですが、その都度お申し込みください。
- お振り込みいただいた参加費の返金はできません。ご了承ください。
録画・録音について【終了しました】
この講座は個別の回を受講していただくことができますが、本来はすべての回が全体の文脈のなかで理解されるように構成されており、誤解されやすい内容も含んでいるため、個別の回の録音データと講義スライドは全12回を通して受講される方に限り、当日のご都合がつかない等でご希望があった場合に、提供させていただきます。その場合は、その都度、事務局にご連絡ください。
※本講座は12月18日で最終回を迎えますが、それまでの11回も含めた録音の提供は2020年末(12月31日まで)とさせていただきますので、ご了承ください。
講座案内
第12回「現代の秘儀参入」
日時: 2020年12月18日(金)19:00 – 20:00
参加費2000円
第12回 12月18日(金)「現代の秘儀参入」
そもそも、なぜ「秘儀参入」という分かりにくい言葉を使うのでしょうか? ヨーゼフ・ボイスが「秘儀は中央駅で起こる」と言ったように、秘儀参入は日々の生活の至る所で起こっています。一人ひとりがそのことに気づき、自分の意志で秘儀参入を目指すことに何の意味があるのでしょうか? それによって実際に個人、社会、世界は変化するのでしょうか? 私たちが現代の日本で、シュタイナーが100年近く前に提示した人智学・アントロポゾフィー協会や精神科学(霊学)自由大学に関わることに、どんな意味があるのでしょうか? その問いに真剣に向き合い、私自身がたどり着いた答えを提示することで、それが参加者一人ひとりの問いや答えとどう響き合うのかを感じつつ、この講座を終えたいと思います。