ご挨拶
世界はますます2つの対極的な方向に二分されつつあるように見えます。一方には、現在までに達成された既得のものや現状に固執し、それをいつまでも維持しようとする衝動が見られます。それはたとえば子どもや女性、社会的・民族的なマイノリティへの虐待や差別という形で現れます。他方で、人間の中には個人、社会、人類の次元における発達と進化を促進しようとする本能があります。これらの対立する衝動はとりわけ教育と医学の中で衝突します。なぜなら、この2つの分野における主要な問いは、子どもや患者の発達が支えられるか、抑圧されるかということであり、それは教育者または治療者が自分自身の発達を目指して努力しているかどうかに掛かっているからです。この意味において、日本のコリスコ・グループは、医学と教育の共同作業を通して、個人と社会の健康と進化に寄与することを目標に掲げたいと思います。
日本の現在の状況において、私たちは次の問いの前に立っています。それは、すでに50年近く前に日本にもたらされた人智学・アントロポゾフィーは、この社会のさらなる進化を本当に支えることができるのかということです。日本の社会もまた、多様な背景をもつ個人によって共に形成されてきたものです。私たちはアントロポゾフィーへの取り組みを通して、そこに働く人類共通の精神が、日本の文化、言語、社会システムの中を生きる人々の魂の中に新たに生まれ、そこから世界市民の共同体の進化のための力が発生することを目指して、努力していきたいと願います。